不眠症について
不眠症とは、夜に眠れないなどの睡眠の問題があり、日中に眠くて身体がだるかったり集中力が低下することで、生活に支障が生じる病気です。布団に入ってもなかなか眠れず、「早く寝ないといけない」と不安や焦りが強くなり、余計眠れなくなるといった経験をされている方は多いと思います。不眠の訴えをもつ方は年々増加しており、成人の3人に1人が何らかの不眠の症状を感じていると報告されています。睡眠への恐怖心が高まると、「今夜も眠れないのでは」と朝から一日中睡眠のことばかり考えて何も手につかなくなったり、日中の眠気やだるさ、集中力の低下にもつながるため、仕事や家事がうまくいかなくなり、抑うつ状態に陥ることもあります。不眠症の原因は様々ですが、眠りたい時に、何らかの理由で体を「覚醒」させる機能が、「睡眠」を誘う機能よりも上回ってしまった場合、不眠が起こると考えられています。
不眠症の分類
- 入眠障害(なかなか寝付けない)
床に入って寝付くまでに、30分~1時間以上かかるタイプ。精神的な問題や不安、緊張が強いときなどに起こりやすいです。 - 中途覚醒(夜中によく目が覚める)
睡眠中に何度も目が覚めたり、一度起きた後なかなか寝付けなくなるタイプ。不眠の訴えの中で最も多く、中高年でより頻度が高いといわれています。 - 早朝覚醒(朝早く目が覚める)
明け方、予定時間より2時間以上前に目が覚めてしまい、その後眠れなくなってしまうタイプ。高齢者やうつ病の方に多くみられます。 - 熟眠障害(ぐっすり眠った気がしない)
睡眠時間を十分にとったのに、熟眠感が得られないタイプ。他のタイプの不眠症を伴っている場合も多いです。
お薬による不眠症の治療
- GABA受容体作動薬 ~脳全体を休めて眠りをもたらす~
脳の興奮を抑えるGABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の働きを促すことによって、脳の活動を休ませて眠りへと導きます。お薬の構造から「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」に分けられます。 - メラトニン受容体作動薬 ~体内時計を介して眠りをもたらす~
メラトニンは体内時計の調整に関係し、睡眠と覚醒のリズムを調整する働きがあるホルモンの一つです。メラトニン受容体作動薬は、脳内のメラトニン受容体に作用し、体内時計を介することによって、睡眠と覚醒のリズムを整え、睡眠を促します。 - オレキシン受容体拮抗薬 ~亢進した覚醒を抑えて眠りをもたらす~
オレキシンは起きている状態を保ち、覚醒を維持する脳内物質です。オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンの働きを弱めることによって脳の覚醒を抑制し、眠りを促します。
治療の流れ
- 日常生活を見直し、不眠の原因となる生活習慣を改善させます。
(睡眠衛生指導、睡眠日誌によるセルフモニタリングなど) - 必要に応じてお薬を服用したり、認知行動療法的アプローチを組み合わせていきます。
- 症状が良くなればお薬を減らしていきます。